愛犬の病に向き合って

私が《保護者》であり、リーダーとして育てたパールとは、強い絆が生まれました。楽しい思い出はたくさんあります。

家でシリアスな芝居の練習中、台本を声に出して読んでいたら、パールが「どうしたの? 怒ってるの?」と心配そうにやってきて。「怒ってないのよ、お芝居だから」と言いつつ、可愛くて笑ってしまいました。とても賢くて、不思議な話ですが私の衣裳の場所をマネージャーに教えてくれたことも。

私が落ち込んで泣いていたことがありました。するとパールが寄ってきて、涙を舐めて前足で私の腕をポンポンとやさしくタッチしてくれたんです。

なんだか「済んだことはもう忘れようよ」と言われたようでした。「ありがとうね」と撫でているうちに、つらい気持ちがどこかに飛んでいって―。パールには本当に助けられました。

そんな日々がずっと続くような気がしていたのに、12歳になったパールに病が見つかったんです。突然パールの体が震え出して止まらなくなって、大急ぎで病院に連れていったところ、膀胱がんが進んでいるとの診断が。このままだと余命3ヵ月と言われ、ショックを受けました。

手術を受けたものの、1ヵ月後に再発。最初の手術で膀胱が半分になり、これ以上手術を重ねるとパールの体に大きな負担がかかってしまう。そこで東洋医学やホメオパシーを取り入れている病院なども含めてさまざまな治療法を探し、納得のいく先生と出会えました。

ひとつ印象的だったことがあります。「ジュディさんが毎日そんな深刻な顔をしていたら、パールは心配しますよ」と医師から言われて、ハッとしたんです。

「そうか、パールのためにも自分のためにも、楽しく毎日を過ごそう」と決め、明るい声でパールに話しかけていたら、驚くほど元気になってくれた。生き物どうし、気持ちは伝わるものだなと胸に刻みました。当初、病気のため薄くなっていた体の毛が、治療の効果もあってふさふさに戻ったんですよ。

最期の頃のパールは、歩くこともままならないのに、私が仕事に出かけようとすると玄関まで見送りに来て――。「来なくていいよ」と言っても来るので、私は涙をこらえながら仕事へ行きました。

病気が判明してから1年8ヵ月後、パールは13歳で永眠しました。人間の寿命に換算すると、余命宣告から10年弱、生きてくれたのだからすごい。

彼女は私に、心の準備をさせてくれたのかもしれないですね。危篤になったときは、仕事場から入院先の病院まで飛んで行ったんです。私が到着する10分前に亡くなったけれど、まだ体があたたかいパールの顔を見て、最後のお別れをしました。見送った後は、ただ「ありがとう」という気持ちでいっぱいでした。

パールは初めて自身で育てた犬で、13年間苦楽をともにした(写真提供◎ジュディ・オングさん)