万一のときに備えて安全な場所を

パールのときと同じように、アイリスを育てるときも、アイリスが5匹の子を産んだときも、《育休》を取ったんですよ。命を預かっている責任がありますから一所懸命お世話しています。

アイリスの5匹の子どものために、ケージを5個用意して「ハウス」のトレーニングをしました。

犬は、もともと狭いところに入ると安心する本能があって、子犬の頃にその本能を引き出してあげると、ケージの中が一番安心だと理解してくれるそうです。今日の撮影現場でも、アポロと妹のニコラはケージでお行儀よくしていますね。(笑)

アイリスの子、アポロ(上)とニコラの赤ちゃんの頃。いまはすくすくと成長(写真提供◎ジュディ・オングさん)

私が倒れた場合や災害時など、万一のときに備えて、お互い犬を託し合える友人もいるんですよ。今後のことをあらかじめ決めておくことも、ある程度の年齢になってからペットを飼う際に必要なことでしょうね。

パールと死別した経験から、ペットとの別れも覚悟しなければいけないと痛感しました。

犬の寿命は、人間の5分の1から7分の1程度。つまり人間の生死を凝縮した形で見せてくれる。私も、パールが子どもから大人になり、老いて最期を迎える様子をつぶさに見てきました。そのおかげで、自分もいずれ同じ道を辿るのだという、覚悟のようなものも生まれた気がします。

犬がとりもつご縁で、09年から「介助犬サポート大使」も務めさせていただいています。「介助犬」とは、障がいのある方や生活に不便がある方の暮らしに合わせて介助をする訓練を受けた犬のこと。

たとえば、障がい者の方が助けを必要とする際、「テイク・ケータイ」と指示を出すと、介助犬は携帯電話を探して持ってきてくれます。「テイク・ボトル(水を持ってきて)」と言えば、冷蔵庫のドアを開けてペットボトルの水を取り、ドアを閉めて持ってきてくれる。

私がうれしかったのは、犬も尻尾をふりながら仕事を楽しんでいるということ。介助犬は自分が飼い主の役に立てることが喜びなんですね。介助犬と暮らすようになり、それまで打ちひしがれていたけれど生きる喜びを取り戻したとおっしゃる障がい者の方の言葉が印象的でした。

犬は人類史上、初めて人間とパートナーとなった動物と言われています。太古の遺跡にも、犬が人間と一緒に墓に葬られているのが発見されているとか。これからも、お互いを愛し、愛される関係でいたいと思います。

(撮影:宮崎貢司)