ペットロスを克服できたわけ
その後、普段どおりに仕事をしていました。でも、帰宅後は何もする気になれず、パールの遺影を見つめながらソファに何時間も座っているばかり……。
ハウスキーパーさんに「最近笑わなくなりましたね」と言われても、自分では気づきません。パールとの別れから半年後、健康診断で血液検査の数値が急に悪化していたので、心身ともにダメージを受けていたようです。
実家の犬の死に際しても悲しい思いをしてきましたが、ここまでの変調はなかった。このときばかりは違ったので、これがいわゆるペットロスなんだ、と思いましたね。
ペットロスを克服した方の話として、新しいペットとの出会いが効果的ということは耳にしていましたが、私はすぐに次の子を迎える気持ちにはなれませんでした。
後押ししてくれたのは、パールがお世話になっていた先生の、「そろそろ新しい子を迎えてジュディさんが笑ってくれたほうが、パールも喜ぶと思いますよ」という言葉。愛犬仲間にも励まされ、ようやく気持ちを切り替えて子犬を探すことにしたんです。
そして、パールと同じ犬種で探して運良く出会えたのが、アイリスです。
わが家にアイリスが初めてやってきた日、リビングルームにはパールの祭壇があって、その下にパールのおもちゃと私が描いたパールのスケッチを飾ってありました。アイリスをケージから出すと、トコトコ歩いて行き、その絵にチューをしたんです。びっくりしました。
もしかしたらパールの魂が、「ママ大丈夫かな。幸せになってほしいな」と願い、私にアイリスを贈ってくれたのではないか。そんなふうに感じて、アイリスが母犬の胎内に宿った日を計算してみると、パールの四十九日の2週間後でした。
カーテンのすき間から空を見上げ、うつろな表情で「パール、パール」と呟いていた私が、アイリスが来てからはキャッキャッと笑い、いつもの調子に戻れたんです。パールの遺影とアイリスに、あらためて「ありがとう」と伝えました。