月3万円台の格安シェアハウス

虚弱体質の私にとって、受験勉強の日々は体調不良との闘いだった。それに加え、お金のないわが家には私立大学や浪人という選択肢がないため、学費が比較的安い国公立しかない。絶対に失敗できないプレッシャーで、精神的にも追い込まれていった。そんななかでも、閉鎖的な地元を出て広い世界に行きたい、もっと勉強したいという思いが、心の支えになっていた。

無事に関西の大学に合格するも、入学金が払えないという問題に直面する。奨学金ありきでの進学だったが、大学の規定で奨学金が下りるより先に納めなければならず、間に合わなければ入学自体が取り消されてしまうという。なんとか母が知り合いに借金をしてくれてことなきを得たが、その後も、課題で使うパソコンが買えないなど、さまざまな問題に直面していく。

一番困ったのは住まいだった。大学には寮がなく、アパートを借りるお金もないため、知り合いに紹介された、水道・光熱費など込みで月3万円台の格安シェアハウスに入居した。個室はなく、一部屋に6人ほどが布団を敷き詰めて雑魚寝。2つしかない勉強机はいつも取り合いだった。

エアコンがなくて、夏は熱中症になり、友人の家や保健室で休ませてもらうこともしばしば。狭い空間ゆえに人間関係はとてもぎすぎすしていて、住人同士が朝から口論になっているのを何度も見かけた。奨学金を借り、アルバイトもしていたが、奨学金の一部を実家の生活費の補塡に使われていたこともあり、個室のある環境に住むことは難しかった。

ストレスからさまざまな症状に悩まされ、医療費がかさむ日々。原因不明の体調不良でバイトができなくなった時には何度も退学を考えたが、なんとか卒業し、就職もできた。しかし、職場に恵まれず職を転々とすることになる。社会人になってからも引っ越しの初期費用が払えず、シェアハウスを渡り歩く日々は25歳まで続いた。

現在は、書く仕事とアルバイトで手取りは月15万~17万円ほど。そこから高校時代と大学時代の奨学金を返し、さらに実家への仕送りも時々行っている。生活の安定は夢のまた夢だ。

そんな私の体験を知人の勧めでSNSに投稿したところ、想像を超える反響が集まった。貧困問題を発信し始めて実感するのは、貧困の実情は思ったより知られていないということ。そして、生まれながらマイナスを背負った人は、その状態から抜け出せないという負のスパイラルが続く。そんな人たちの声は社会に届かず、まるで存在しないかのようだ。

《ないもの》にされている痛みを可視化するために、私はライターとして彼らの声を拾い上げ、その現実や問題を発信している。その中で出会った2人について紹介したい。