イラスト:大高郁子
コロナ禍で家にいる時間が長くなった昨今、ペット需要が高まっています。2020年の新規飼育頭数は犬が14%、猫は16%も増加したそうです。とはいえ、住宅環境のために犬や猫が飼えない人にも人気の、ハムスターやウサギ、爬虫類などの小さな動物たち。愛らしい表情やお茶目な仕草で癒やしをくれるペット。長年、生活をともにしてきた家族の一員は、言葉がなくても通じ合える、よき理解者なのです。石黒聡子さん(仮名・東京都・介護福祉士・63 歳)も、ジャンガリアンハムスターとの楽しかった日々を振り返ります。

別れのつらさを知りながら招き入れることを決断

令和4年1月15日、3年1ヵ月一緒に暮らしたハムスターのマナが穏やかに旅立っていった。動物病院の先生に「この種でこんなに長生きした子は、うちの病院でも初めて。幸せなハムちゃんでした。どうぞ悲しまないで」と言われるほど天寿を全うした生涯だった。

ジャンガリアン種のハムスターのなかでもパールホワイトと分類される真っ白な毛と、対照的に真っ黒でまん丸い瞳が可愛いハムスターが私のところにやってきたのは平成30年のクリスマスイブ。その年の初め、同じ種類のハムスターのアンジュを2歳4ヵ月で亡くしていた。フランス語で天使を意味する名前を付けた初代が亡くなった時、あまりの別れの悲しみに、私と娘はもうペットは飼わないと心に決めた。

その別れから11ヵ月、私の同僚の夫が、学校で生き物係の顧問をしていて、生まれたばかりのハムスターたちの親を探していたのだ。

「石黒さん、新しい家族を迎え入れませんか。小さくて真っ白で本当に可愛い子なんです」。

胸がざわめいた。
アンジュの生まれ変わり?
数日の逡巡ののち、心に決めた。その子を新しい家族にしよう。年が明けて春が過ぎると娘は嫁ぐことになっていた。すると、還暦を過ぎて私のひとり暮らしが始まる。その子を迎えたら、アンジュと暮らしたような日々が戻ってくる。

「あーあ。やっぱり飼うことにしちゃったのね」。娘の半ばあきらめ顔をよそに、その子はやってきた。体重は32グラム。Mサイズの卵1個よりもずっと小さくて、それでも胸にずっしり響く愛おしい生命。名前はすぐに思いついた。ハワイ語で「大切な」とか、「宝物」「生命力」という意味をもつマナだ。