最初の1ヵ月ほどは、まったく懐いてくれない子だった。少しずつ慣れるようにと、餌を食べている時に背中を撫でようとしたとたん、カッと口を開けられ、咬まれそうにもなった。娘は、「あの子はダメだよ。アンジュとは違う。私はこの子と半年もいないけど、懐かなかったらどうするの?」と言う。

せっかく私に与えられたクリスマスプレゼントだったのに。アンジュのように掌に載せ、膝に載せ、語りかけながらゆっくり撫でて、癒やしの時間を共有できないの? ダメ元で軍手をしてつかみ、抱いてみた。数回咬まれたりしたが、それから軍手を外し、ヒマワリの種をマナの鼻先に恐る恐る差し出すと、警戒しながらも食べてくれた。

 

どこにでも登ってしまうお転婆ぶり

ようやく慣れたマナとの生活は、本当に愛おしく楽しいものだった。ハムスターはなぜかやたらと高い所に登りたがる。春になったので娘が2畳用カーペットを巻いて壁に立てかけていたことがある。ある日何かの気配を感じて顔を上げたら、マナの視線とぶつかった。

なぜ身長160センチの私とあなたの目が合うの? なんと私の背の高さくらいあるカーペットに夢中になって登っていき、下りられずフリーズしていたのである。もう、本当にこの子は。抱いて下ろしてあげると、つまようじの頭くらいのピンクの鼻をくーんと上に向ける仕草を見せた。

こんなこともあった。仕事が休みの日は、ケージから出して思いっきり駆け回らせてあげるため、遊ばせる部屋の扉を閉め、クローゼットを閉め、ベッドと壁の隙間を埋めて、これで準備は万全。さあ、好きなだけ走り回りなさいと、マナを解き放った。

数分後、扉を開けて迎えに行くと、姿が見えない。忘れかけたころに干からびた死体になって出てくるの? 涙ぐんだその先で、パソコン機器の中から光るものが。え? プリンターの中に入り込んでしまって出られないマナと目が合った。もうマナ、あなたは信じられないことばかりして。