璃花子は小さいころから「一番になりたい」「みんなに見てほしい」という気持ちの強い子でしたから、教室で過ごすことで、まわりのお兄ちゃんやお姉ちゃんたちと肩を並べようとする意思が自然と養われた気がします。あとは「すごいね、璃花子はもうこんなことができるんだ」と褒めていれば勝手にどんどんやってくれるので、親としては楽でした。(笑)

忘れられないのは、水泳教室で受けたクロールの進級テストのことです。当時彼女は4歳で一番小さかったので、その級で最初に泳ぐことになっていました。たまたまその直前に、別の級の子が平泳ぎのテストを受けていた。その様子を食い入るように見ているなあ、と思っていたら、突然、一度も習っていない平泳ぎで泳ぎ出したのです。

といっても、「のようなもの」。周囲には溺れているようにしか見えません。慌ててコーチが飛び込んでいました(笑)。私は、前に泳いだ子を真似たのだとすぐわかったので、おかしくてたまりませんでした。

テストをパスしなくても、また受ければいいだけ。その後も、誰よりも速い選手になってほしいということは、私のなかでは二の次でしたね。まずは水泳を楽しんでほしい、そして水泳を通じて、世の中の役に立つ人間性を養ってほしいと思いました。

幸い璃花子にそんな素振りはありませんでしたが、天狗になって人を見下したり、お世話になった人への感謝の気持ちをなくしたりしたら、「いつでも水泳はやめさせるよ」と伝えていました。

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