環境に配慮して、
オリジナルの洗剤も開発

舞台衣装だけでなく、うちのクリーニング店にはスタイリストさんや、おしゃれが大好きな一般のお客様たちが様々な素材の服を持って来店されます。大切な1着ですから、どの服も新品同様にイキイキとよみがえらせたい。それにはどんな洗い方がいいだろう?と、試行錯誤していく中で、どんな洗剤を使えばいいのかということも大きな課題になりました。

一般的なクリーニング店では、おしゃれ着をドライクリーニングで洗うことが多いでしょう。でも、ドライクリーニングに使用する溶剤の原料は石油です。使用する過程で二酸化炭素も排出されるので、決して環境にやさしいとは言えません。「服をきれいにする」ために、環境を汚してしまうのは非常におかしな話です。

そう考えるようになったのは、僕たち兄弟が、若い頃からサーフィンに親しんできたことも影響しているかもしれません。サーフィンを通じて知り合ったオーストラリアやアメリカの友人たちは、自然に対する考え方が日本人とはまったく違う。たとえ、山火事や水害などの自然災害があったとしても、仲間がサメに襲われたとしても、彼らは自然をまったく憎まないんです。

そんな彼らから影響もあり、うちの店では環境破壊につながるドライクリーニングの比率を押さえて、可能な限り水洗いにシフトしています。で、そのためには、水洗いに適した洗剤を使う必要がある。ここで、兄が登場するんです。もともと兄は、海外のオーガニックコスメを輸入する仕事に携わっていたので、ナチュラルオーガニックという視点から、オリジナル洗剤の開発に加わってくれることになりました。節水も意識して、すすぎが1回でもきちんと洗えるノンケミカルな洗剤を――コットンなどの一般的な服に使う洗剤だけでなく、シルク&ウール専用のもの、デニム専用のものなど、様々な種類の洗剤を開発し、現在、うちの工場ではこのオリジナル洗剤を使ってクリーニングをしています。

お店の奥では、洗濯の仕方を見せられるスペースが

 

この洗剤、おかげさまでお客様にも好評です。当初は、商品として販売することは考えていませんでした。でも、お客様がうちの店に服を持っていらしたときに、自宅で洗えそうなものは、じつはお返ししているんです。「ご自宅で洗ってください。そのための洗剤もありますから」って。そうして、うちの洗剤を使って手洗いする方法をお教えしているうちに、洗剤自体がどんどん評判になっていきました。おかげさまで、今では百貨店さんやセレクトショップさんの店舗でも販売していただけるようになりました。

ちなみに、僕らのコンセプトに共感して最後に加わった《3男》の今井はITに強いので、ネット関連の仕事を主に担当しています。中年男が3人揃い、オリジナル洗剤をパリの展示会に出品しようというときに、何かインパクトのある名称をつけようと、兄が「洗濯ブラザーズ」と命名したんです。この名前のおかげで、芸人さんと勘違いされることも多くて、イベント会場で「今日は、何を歌ってくれるんですか?」と聞かれることも(笑)。そういうときは、「いえ、洗濯の仕方を教えます」と答えるようにしています。

環境に配慮し、自宅から容器を持っていけば洗剤の計り売りもしてくれる