「その言葉でしか気持ちを表現できないと思うのならば使ってもいいけれど、若者にウケるだろうとか思って、無理に使うのは違うんじゃないでしょうか。」

最近の若者は、過剰な敬語を多用している

酒井 ところで、金田一さんがお若かったころはどんな言葉が流行っていたのでしょうか?

金田一 僕が一番使っていたのは「カッコイイ」ですね。いまは「カワイイ」に取って代わられましたが。酒井さんが本に書いていた「うっそー」「本当?」っていうのは、少し下の世代。

酒井 「カッコイイ」を漢字で書くときに、「恰好いい」なのか「格好いい」なのかよく迷います。

金田一 普通は「格好いい」でしょうけど、当時の感覚だとカタカナ。外見のことを指す「格好」の本来の意味を離れて、「カッコイイには内面もあるんだぞ!」と、僕らは信じていたんです。

酒井 内面の部分も含めた「カッコイイ」は、すっかり定着して、かつて流行語だったとはわからなくなりました。

金田一 意味が少しずつ変わりながら定着することはありますね。

酒井 最近の若者は、過剰な敬語を多用している印象があります。「よろしかったでしょうか」とか、「**さんとお付き合いさせていただいています」とか。丁寧すぎたり、へりくだりすぎたりしがちなのは、なぜなのでしょう?

金田一 若い人がシンプルな言葉を使うと、礼儀がなっていないと思われる場合もあるから、怖さもあるんでしょうね。近ごろは「申し訳ございません」という言い方が一般的になっているけれど、「申し訳ないです」が正しい言い方です。でも、「申し訳ございません」と、実は間違った語形で謝らないと怒る人もいるみたいだし、しょうがないのかなとも思います。