国語学者の金田一秀穂さん(左)とエッセイストの酒井順子さん(右)
「わかりみがすぎる」「草生える」「こちらでよろしかったでしょうか」などなど、日々新しい言葉が生まれては消えていきます。そんな言葉にまつわるモヤモヤを綴ったエッセイを刊行したばかりの酒井順子さんが、祖父・父に続き国語を研究している金田一秀穂さんに、「美しい日本語」について聞いてみると──(構成=内山靖子 撮影:洞澤佐智子)

女言葉は古臭い?

酒井 今日は、言葉の専門家である金田一さんにお聞きしたいことがたくさんありまして。

金田一 どんなことですか?

酒井 私はいま50代なのですが、言葉に関して悩ましい年ごろと言いますか。少し前までは気軽に若者言葉を使っていたものの、最近「**だよね」というような言葉遣いが、年齢にそぐわないように思い始めまして……。

金田一 はい、はい。

酒井 それで、いわゆる「女言葉」が口から出てくるようになったのですが、若い人の前で「**なのよ」などと言っていると、それはそれでとても古く聞こえるであろうことも、よくわかります。私の世代で女言葉を使っている人は少ないですし、どんな言葉遣いをしたものかと。

金田一 確かに、大学で女言葉について授業をしたとき、学生が「そんな古臭い言葉は使わない」と言っていましたね。昭和の文豪の小説に登場する女性のような、「〇〇だわ」などという女言葉を日常的に使っていたのは、僕ら60代後半が最後の世代かもしれません。

酒井 私よりやや上の世代ですね。