50歳を過ぎたらどんな言葉でも大丈夫

酒井 丁寧語や尊敬語を《盛り》すぎて変な日本語になったり、言いたいことが伝わらなかったりするより、多少乱暴な印象を与えても、シンプルな言葉をそのまま使ったほうがいいように思いますけど。

金田一 それは年の功(笑)。僕もつくづく感じていますが、50歳を過ぎると、もはやどんな言葉を使っても大丈夫というところがあるじゃないですか。他人にどう思われてもいい、というか。

酒井 目上の人自体がだんだん減ってきますしね。

金田一 そうそう。でも若者の場合は、まだその境地に達していないから。

酒井 防衛手段としての過剰敬語なのですね。でも、年をとっていても、お断りするときの言い方は難しいなと感じます。

金田一 僕も、です。断るのがつらいから、たいてい受けちゃう。

酒井 この対談も……。(笑)

金田一 いやいや。でも、断るときもシンプルに「できません」でいいわけです。酒井さんは雑誌の連載が終わるときに「ご卒業ということにさせていただければと思います」、と連絡がきたとか。言いにくいことだとしても、気に入りませんね。

酒井 「卒業」って、まるでめでたいことかのように。もう少し、悪者になってほしかった、と。責任から逃げている印象を受けます。