俳句を始めてみたい人、ちょっと経験のある人にお送りするスペシャル企画です。人気の俳人・夏井いつきさんが講師となり、作句のコツを伝授。これを読めば、すぐ一句詠みたくなること請け合いです(構成=篠藤ゆり)

「俳句上達のカギは季語の見つけ方!『歳時記』で知識を学んだら〈季語の現場〉で五感を使い、実感することが大切」はこちら

作り方の違いを知る

俳句には、次の2つの作り方があります。

(A)一物仕立て 「季語」(一物)だけを詠んで作ること。

(B)取り合わせ 「季語」と、季語とは関係のない「俳句のタネ」を「取り合わせ」て作ること。

この「一物仕立て」と「取り合わせ」の違いを、「紫陽花」を詠んだ俳句を例に見てみましょう。

紫陽花の大きな鞠(まり)の皆褪(あ)せし
松本たかし

紫陽花やきのふの誠(まこと)けふの噓
正岡子規

最初の句は、季語である「紫陽花」のことを観察して表現している「一物仕立て」の句。紫陽花の色の変化に注目しています。一方、2番目の句は、「紫陽花」という季語と、季語とは関係のない12音を「取り合わせ」た俳句です。

一般に俳句というと、季語だけで俳句を作ろうとしがちですが、よっぽど鋭い観察眼がないと凡庸になってしまうので、初心者にはとくに「取り合わせ」の作り方をお勧めします。実際に、純粋な「一物仕立て」は全俳句の3~4%と言われていて、「取り合わせ」の俳句が多いのです。