俳句を始めてみたい人、ちょっと経験のある人にお送りするスペシャル企画です。人気の俳人・夏井いつきさんが講師となり、作句のコツを伝授。これを読めば、すぐ一句詠みたくなること請け合いです(構成=篠藤ゆり お題写真撮影=中村すじこ)

「作った句に向き合う 投句&講評は学びの宝庫」はこちら

夏井さんが解説「写真de 俳句」

「写真de俳句」のコーナーでは、毎月写真1点をお題に俳句を募集し、「天」「地」「人」「並」「ハシ坊」の5段階で評価。なかでも、「ハシ坊(ハシにも棒にもかからない句しか作れない)と学ぼう!」欄では、一句ずつにアドバイスをつけています。一部をご紹介します

お題の写真を見て俳句を作ってみよう
お題「 富良野のラベンダー畑」
《 ポイント 》

(1)写真を描写してみる

(2)写真の中に入り込んでみる 

(3)写真に写っていないものを意識してみる

草陰のすべる蜥蜴や水めいて(大西どもは)

「初めての吟行で見た場面。この兼題写真の中でもありえるかなと思いました。蜥蜴は水が流れるように動くんですね。肌もキラキラしていました」と作者のコメント。すべるように走っていく「蜥蜴」を「水」と表現した点がよいです。「草陰」が要るのかどうか。「の」なのかどうか。「~めいて」がベストなのか。小さな調整が必要です。

バス停の白いハンケチ五月雨や(鶴木綿)

「ハンケチ」「五月雨」どちらも夏の季語です。落ちているところを描くことで、ハンケチの季語としての比重を軽くする方法もあります。

◆添削例:落ちているハンケチ五月雨のバス停
ひとり旅目に沁み入るやラベンダー(益深)

中七がありがちな措辞です。「ラベンダー」の様子を描写しましょう。それによって、読者は、きっと目に沁みるような光景なんだろうなと感じてくれます。

ラベンダー畑と椅子とテーブルと(岩本夏柿)

評価=並。並列にも色んな手法があります。この句のように、映像を作りたい時は、遠→近、あるいは近→遠、この順にモノを並べるやり方です。並列でイメージを取り合わせる方法もあります。その場合は、並列のうちの一つに意外性をもたせつつ、全体のバランスを保つ。ちょっと高度なテクニックです。