「俺は幸せだ」
私には弟が一人いたが、亡くなってからかなり時間が経っているため、父のことで義妹を頼るわけにはいかないと思っていた。しかし最近では、話し合いをした訳ではないが、近くに住む義妹が、協力してくれるようになった。朝、父の安否確認をして、サラダなどをテーブルにセットしてから仕事に行ってくれるのだ。
私と二人の息子、義妹と二人の娘の計6人で、LINEグループで連絡を取り合い、父に変化があった時は共有できるように設定した。私や義妹は、父のについて困っていることをLineに書いてしまう。心配した姪は年末に、私の次男は、子どもを連れてお正月に様子を見に来てくれることになった。
父は事故の後、毎日家に籠っていたために、椅子から立ち上がる時に、よろっとするようになっていた。雪で路面状態が悪い中、転んで骨折をしたら大事になると考え、私は父を病院以外には連れ出さないようにしていた。
父も、特に外出したそうな素振りは見せなかったが、孫と出かけるなら話は別らしい。次男が買い物に誘うと、玄関から車まで、素直に脇を支えてもらって乗り込む。
回数を重ねるうちに、支えがなくても、スタスタと歩けるまでに回復してきた。
姪や次男が心配して来てくれたことを、忘れてほしくない。
お正月が終わり、彼らが帰った後に私は言った。
「パパ、みんな来てくれて、良いお正月だったね」
「そうだな。孫もひ孫も来てくれて、俺は幸せだ」
父の口から出た「幸せ」という言葉に、私も幸せな気持ちになれた。
事故の前の11月、父の要介護認定審査の結果は要支援1だった。
年明けに行われた審査では、要介護1とされた。
認知症ではあるが、歩いてトイレに行けるため、おむつはしていない。
運動能力を低下させないために、デイケアサービスでリハビリを受けるのがいいのではないかと、私は父に提案した。
「嫌だ。あれは年寄りが行くところだ」
「何言っているの! 93歳のパパは、十分年寄りだからね!」
「年齢ではない。俺は元気だ。年寄り扱いするな!」
せっかく「褒める介護」をしようと思っていたのに、私はまた挫折しそうだ。