初めてデイケアサービスを利用する前夜、父は何度も私に確認した。

「迎えに来てくれるのか? 車がないから自分では行けないんだよな」

「車がない」ことが、何もかもを不安にしているのが不思議であると同時に、一種の憐れさを感じる。でも、もう運転はできないとういうことを、早く理解してほしい。

お迎えのマイクロバスが家の前に到着した。非常に気温が低く、路面が凍っているため、施設の女性職員は、父が転ばないように腕を取って歩き始めた。私は見送るために後ろについていた。バスのドアの前で、職員は父に聞いている。

「座席はどこがいいですか?」
「あなたのそばがいい」

私は吹き出し、ツルっと滑って転びそうになった。車問題以外は、ジョークも言えるし、時々私や義妹に「いつもありがとう」と労いの言葉をかけてくれる好々爺のような父。デイケアサービスに行った感想では、どんな言葉が飛び出すだろう。期待して私は聞いた。

「おもしろかった?」
「まあ、あんなもんだろう」

「誰かと話した?」
「いや、話さなかったけど、不思議な人がいた」

「不思議って?」
「同じバスに、指輪を4つしている人がいた。どうして4つもしているのかな?」

もちろん私にわかるわけはないが、デイケアサービスはワンダーランドなのかもしれない。いろいろな個性と、それぞれに積み重ねた人生がある。父が通う度に、私の知らない世界を教えてもらえそうだ。

(つづく)