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「あなたのそばがいい」

私はインターネットで、父の居住地域への送迎があるデイケアサービスの施設を探した。以前父が通っていたスポーツクラブにあるようなマシーンがあって、ジムに来ているような気分になれるところ。昼食のメニューがおいしそうなところ。麻雀サロンがあるところ。父の気を引くことができそうな条件で検索した。

いくつかの候補を出して、地域包括支援センターの相談員に連絡したら、父にぴったりのところを探して、パンフレットを見せに来てくれた。父は、ジムというキーワードに一番関心を示して話し出した。

「30年間、スポーツクラブに通っていたので、運動はしたいですね。雪が解けたらまた行きます」

相談員さんは父が考えていることに察しがついたらしく、さりげなく言ってくれた。

「あのスポーツクラブは、車でなければ行けないところにあるから、違うところにしませんか」
「いいえ、そのうち車を買いますから、デイケアサービスに行く気はありません」

表情は穏やかで、怒りっぽさはなくなった父といることに、楽しさを感じていた私だったが、また車問題の振り出しに戻り、気が重くなる。しかし、相談員さんは、多くの似たようなケースを見ているから、さらっとかわしてくれた。

「娘さんがいいと言わなければ、車は買えませんから、無理ですよ」

父はしょげたようにしばらく黙っていたが、諦めたように言った。

「1回だけ行ってみるかな……」