戦の申し子として獅子奮迅の活躍をし、平家を討った義経も、兄・頼朝の命とそれを忠実に守った義時の計略で非業の死を遂げる

女性たちの活躍も丁寧に描かれる

内紛を中心に描いているところも『鎌倉殿――』は頼朝と義経を描いた従来の時代劇と違う。その分、これまでの時代劇が厚く描いてきた義経による「一ノ谷の戦い」と「壇ノ浦の戦い」の部分があっさりしていた(第17話と第18話)。

外敵との戦いより内紛のほうが陰湿で見る側を引き付けるのかも知れない。大ヒットドラマTBS『半沢直樹』(2013年と2020年)も東京中央銀行の内紛劇がメインだった。

頼朝にとって恩人であるはずの上総広常(佐藤浩市)の謀殺の描写には時間がかけられた。内紛にほかならない。何が起きたのか分からないといった広常の表情と頼朝の冷笑が忘れられない。佐藤、大泉が名演を見せた。第15話だった。

内輪揉めの末だった義経の自害の描き方も丁寧だった。菅田も諦念した義経の複雑な思いを見事に表した。頼朝のために平家と戦ったことへの後悔もあったのではないか。第20話だった。

女性たちが男性たちの陰に隠れていないところも人気の理由に違いない。現代だからそう思うのではなく、いつの時代の女性も活躍や発言をしていたはずなのだ。描き方が足りなかっただけだろう。

例えば源平合戦は1180年8月17日、頼朝軍の放った矢が伊豆国の代官・堤信遠(吉見一豊)の館に突き刺さって始まったが、功労者の1人は八重(新垣結衣)。襲撃の好機を小栗旬(39)扮する主人公の北条義時に矢で報せた。第4話のことだ。のちに2人が結婚したのはご存じの通り。

第12話では頼朝の現在の妻である政子(小池栄子)が、頼朝の愛妾である亀(江口のりこ)の住まいを壊させた。これも過去の頼朝と義経が登場する時代劇ではほとんど描かれてこなかったものの、史書にある話。やはり、あの時代の女性も陰に隠れていた訳ではない。