殺されるとは知らず城に召され、梶原景時(中村獅童・左)と語り合う上総広常(佐藤浩市・右)

歴史上の英雄が身近に

そもそも義経がヒーロー扱いされるようになったのは室町時代の軍記物語『義経記』以降。この物語の真実性については民族学者の柳田國男や数々の歴史学者が古くから否定している。

また、大河『義経』には義経と弁慶(松平健)が京都の五条大橋で出会ったという有名なエピソードが盛りこまれていたが、これは明治期の創作である。

創作をベースにした様式美の物語を好む人はいるし、それが悪い訳ではない。半面、大泉洋(49)演じる源頼朝が狡猾で好色な男で、義経が戦の天才であるものの社会性に欠けるという人物像は新鮮だった。立派すぎて存在が遠かった歴史上の英雄が、身近に感じられるようになった。

実録映画の登場人物たちもそう。健さんたちが演じた仁侠映画の主人公たちとは違い、完璧じゃない人物ばかりだったものの、だからこそ人間臭く、間近に感じられた。

どんな物語も登場人物が近くにいると思えたほうが、面白くなる。