抵抗力を高め、私たちの体を病原体から守ってくれる免疫力。腸内細菌がその鍵を握ることが徐々に解明され、近年では、善玉菌が生み出す物質にも注目が! 日々の生活でできる、よい腸内細菌の育て方、また、それを活かす方法を、赤坂内視鏡クリニック院長の中村尚志さんが伝授します。
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バランスのよい腸内細菌が免疫力を高めてくれる
腸の中に棲んでいる約1000種類・100兆個の腸内細菌。これらは、私たちの健康、なかでも「免疫力」の鍵を握ると言われます。
まず免疫力とはどんなものなのか、消化器系を専門とする中村尚志先生に聞きました。
「免疫力とは、感染症の原因となる病原体を死滅させたり、がん細胞や病原体に侵された細胞を排除して、病気に対する抵抗力を高める働きです。血液やリンパ液の中を流れるさまざまな種類の免疫細胞が、その役目を担っています」
特に、腸は食べ物と一緒に病原体が侵入しやすいので、免疫細胞が集中。腸の内壁に張り巡らされた毛細血管や、リンパ管の中継基地(リンパ節)などには、全体の約7割にあたる免疫細胞が集結しています。
「免疫細胞は病原体を直接攻撃する以外に、リンパ節に病原体を引き入れてその特徴を把握し、専用の武器=抗体を作ることもできます。抗体は腸内だけでなく、リンパ液を介し、鼻や喉、目などの粘膜に届けられ、全身を病原体から守ることに。たとえば腸でインフルエンザ抗体が作られれば、次に侵入するインフルエンザウイルスは即座に撃退されるわけです」(中村先生。以下同)
腸の免疫細胞がそれぞれ力を発揮するためには、腸内環境がよい状態に保たれていなければなりません。その要となるのが腸内細菌です。
「健康な人の腸内細菌は、おおむね善玉菌2割、悪玉菌1割、どちらでもない日和見菌7割で構成されています。免疫細胞と腸内細菌は互いに影響を与えており、詳しい仕組みは研究中ですが、前述の黄金バランスが免疫力を高めることは確かです」