歌姫としてそれこそ黄金期だった頃、『少女A』や『TATTOO』『飾りじゃないのよ涙は』『DESIRE』そして『難破船』など、多くの作家やアーティストに提供された楽曲で、それぞれ彼女は歌の中の主人公を演じてきた。

楽曲によって変えるファッションなど「見せ方」も誰も真似ができないような個性的なものだったが、やはり表現力という部分で他の歌い手を圧倒していたと思う。

もう30年近く前になるが、シングルカットされた『原始、女は太陽だった』、そして彼女の16枚目のアルバム『la alteración(ラ・アルテラシオン)』に収録された『痛い恋をした』『したたる情熱』の3曲の詞を提供したことがある。

おそらく歌い手としてのピークはすでに過ぎていたのだろう、正直に言わせてもらえば、その声もかつての艶やかさや伸びはほとんどないに等しかった。

しかし、その歌声を聴いて思ったのは、歌うために生まれてきたというのは、こういうシンガーのことを指すのかもしれないということ。自分自身の本能に引きずられるように歌っている、どこか情念や執念に似たものを、私は感じたから。

歌唱力、表現力などという歌い手には普通に要求されるもの。そういうものを超えた場所に彼女はいた。