共同生活者としての権利と義務

そこまでしても改善が見られないなら、「精根尽きる」という言葉があるように、「親としてやるだけやったのだから仕方ない」という思いにも至るでしょう。「うちにはもう、あなたの面倒をみていくだけの余裕も経済力もありません」と、強制的自立、つまり家から出て行ってもらうよう促すことも親にはできるはずです。

だからといってそれまで言い続けたことは無駄にはなりません。親の言霊は子どものたましいにちゃんと刻まれます。そのときは心に響いていないようでも、あとから「あぁ、親はこういうことを言っていたのか」と、わかることがあるもの。親であるあなた自身も、年をとってようやく理解できたことがあるでしょう。結果をすぐに求めない根気強さも、子育てには必要なのです。

Bは、促すことに加えて、家事を手伝わせています。なぜこれが必要なのか。子どもにとって家が安住の地になりすぎると、自立を促せないからです。家が居心地の良いだけの場所ではないと教えることが大事ですし、体調を整えるためにも規則正しい生活は必須です。親が働いているぶん、子が家事を担うのは、共同生活者として当然の義務。義務を果たしてこそ、権利が主張できることを実感させなければなりません。それが親子それぞれの幸せぐせにつながります。働かざる者食うべからず。怠惰なだけの子どもには、おかずの一品でも減らす覚悟で手伝わせましょう。

 

(イラスト◎大野舞)