親を看取り、遺品整理をして、相続も済んで一段落。ところが、「親家片(おやかた)」はまだ終わらない。最終課題は、家と土地の後始末なのだ。実際に直面した人たちは、どのように対処したのだろうか。(取材・文=島内晴美)

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◆空き家の活用策を求めて

親の家を相続したものの、自分で住むことはできず、空き家になってしまった……。

このような状況に追い込まれ、頭を悩ませている人は少なくないはず。維持するにも、売却するにも、賃貸に回すにも手間のかかる家。また、その処理を巡って、きょうだいでトラブルに発展することもあるだろう。

困ったあげく、そのまま「放置」して決断から逃げても、問題は増えるばかり。人が住んでいないと、建物は数年で劣化するし、不審者が勝手に住みつくなど治安上の問題が起こりやすくなる。維持費、固定資産税など経済的負担もばかにならない。

かくいう私の実家も活用しているとは言いがたい状態だ。母が亡くなって3年目までは、実家で法事をしたり、人を招いたりと毎月のように通っていたが、4年を過ぎると足が遠のいてくる。

空き家のまま放置していると思われないよう、年に1、2回、帰省のたびに手土産を持ってご近所に挨拶だけはするようにしているが、いつまで続けられるか心許ない。そろそろ決断のときが近づいている。

空き家になったとき、思いつく積極的な活用策は次の4つだ。

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 (1)リフォームして自分たちのセカンドハウスにする
 (2)他人に貸して賃貸収入を得る
 (3)売却する
 (4)家屋を解体して土地活用

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実際に空き家を抱えた人々の悲喜こもごもを追ってみた。

 

◆格安でもいいから貸すという選択肢も

カスミさん(60歳)の実家は都内にある。妹が1人いて、姉妹ともに結婚して所帯を持ち、それぞれ実家近くでマンション暮らしだ。

「母を亡くしてから父がひとり暮らしをしていました。父が倒れ老人ホームに入ることになったときから、実家は無人に。私も妹もすでに自分のマンションを所有していましたし、私はリウマチで足が悪くて、石段の先に玄関のある実家に住むのがつらい。妹はまだ勤めているので、駅まで遠い実家に住む気はないようでした」

いつ父親が家に帰りたいと言うかもわからなかったため、そのまま放置するしかないと諦めていたとき、救いの神が現れた。

「たまたま中学時代の友人が家を探していて、両親の家財道具を置いたまま借りてくれることになったのです。賃料は3万円と格安でしたが、留守番代わりに住んでもらえるのはありがたかった」

しかし、2年前に父親が亡くなった後、ある問題が顕在化する。

「実家のある一帯は近所のお寺の所有地。つまり、実家の土地は借地だったんです。相続すればそのまま借地権を受け継げるのですが、相続しない場合は、建物を撤去して更地にしてほしいと言われました。取り壊しの費用は200万円以上かかる。借地権を返すためにお金をかけるのも何だか悔しくて(笑)、結局、長女の私が相続することにしました」

売却できない家を相続するというのも妙な話ではある。

「今思えば、現状を維持したいという気持ちが強かったんでしょうね」