30代のころの樹木希林さん(写真:『婦人公論』1980年9月号より)
2018年9月15日に75歳で亡くなった女優の樹木希林さん。樹木さんは生前、子どもたちが自ら命を絶つこと、特に新学期を迎える9月1日に自殺が増加することに心を痛め、NPO法人の取材に応じたり、関連するイベントに登壇するなどして命の尊さを訴えていました。2015年8月22日、登校拒否・不登校を考える全国ネットワークが主催する講演に樹木さんが登壇した際、子どもとその親へおくったメッセージを紹介します。

薬剤師になろうと

――早速ですが、「私の中の当たり前」というのは、「世の中の当たり前」と違ってくることが多いと思うのです。特に、「学校に行って当たり前でしょう、なぜ行かないの」というように。でも、不登校でつらいほうからすると、「学校はつらいから行きたくない」「行けない」となる。このように”当たり前”がずれたとき、どう生きていけばいいのか、どう考えていけばいいのかということを、まずはお聞かせください。

樹木:これは私が女学校を卒業するときの話です。

父が、「お前みたいな性格の子は、結婚しても絶対にうまくいかないだろうから、手に職を持て」と言いました。「医者は難しくて年数がかかる。薬剤師なら、お父さんが一軒ぐらい小さい店を出してやる」ってね。

親に決められたから、「それじゃあ薬剤師か」なんて思っていました。