口から出てくるのは感謝の言葉ではなく
隣の市から1人で車を運転して通うのは年齢的に不安だという理由で、娘さんも教室に入ることに。2人も生徒が増えて喜んだのも束の間、レッスン2回目に事件は起きた。
これは店側のミスではあったのだが、娘さんが購入した教材に不備があった。それがわかった瞬間、2人の態度が豹変。店員に「やる気はある? 客を何だと思っているの」と憤怒の形相で怒鳴りつけ、次いで私に「こんなに質の悪い店で長年教室をやっているなんて、信じられない」と言ったのだ。そう、この2人は古株の生徒たちとは比べものにならないほど強烈なクレーマー母娘だった。
それ以降も、「この椅子、座り心地悪すぎ。皆さん、よく何も文句を言わずに通っていますね」と小言を言ったり、コロナ感染対策として行っている検温や簡単な健康チェック、電話番号と名前の記入を、面倒くさいのでやめてほしいと店長に言ったり。
ほかの生徒が帰った後、「あの人たちは熱心で一所懸命なのねえ。私たちは適当にやりたいわ」と、講師の私に聞こえる声で談笑することもあった。
SNS上では感謝の言葉をたくさん並べていたのに、目の前にいる2人の口から出てくるのは文句や不満ばかり。挙句の果てに、「あの店は波動が低くて、自分たちのように敏感な人間には居心地が悪いの。もっと波動が高い場所に教室を移して」と言い出す始末だ。「では、波動が高い場所を私に教えてください」と言うと、「はあ? 探すのは先生の仕事でしょ」と返された。
まあ、ほかの生徒は好きな店の材料を自由に持ち込みたいと言っているし、店側も売り上げが減っているからやめてほしそうな雰囲気だし、いっそ教室の場所を移すべきか考えてはいたのだが……。
今のメンバーだと、場所を移したところで「心機一転して頑張りましょう」なんて気分にはなれない気がする。講師とは名ばかりで、ご婦人たちに気を使う日々。自分の心身を守るためにそろそろ本気でやめようかな、とため息まじりに思う今日この頃だ。