「60代半ばになってようやく悟りました。私も人の子、病気もするし、確実に歳をとっているのだと」

しっかり者の母の変化に泣いた

健康には自信があったのに、病気になるなんて。それも心臓の病とは、と驚きました。「心臓に毛が生えている」と言われていた私がです(笑)。若い頃からずっと忙しいのがあたりまえで、心身ともに無理をして疲れていたんだなと思います。同時に、母の介護をめぐるストレスもあったのではないかと――。

母は料理上手で、私に舞台の仕事が入ると、スタッフの分までお弁当を作ったり、私の個人事務所の経理事務をこなしたりと、昔からずっと私を支えてくれていました。

そんな、しっかり者で明るい母の様子に変化があらわれるようになったのは、90歳頃から。ボーッとする時間が多くなり、バッグやものを置いた場所を忘れる、待ち合わせの場所にたどり着けない、ということが続いたため、専門家に診てもらったところ、認知症と診断されました。

ショックを受けましたね……。そのうえ、日々変わりゆく母の姿を受け入れることもつらかった。認知症の症状に振りまわされてイライラして、声を荒らげることも。そのあとはひたすら自己嫌悪です。母は母で戸惑っていて、「迷惑かけてごめんね」と詫びながら涙するし、二人して泣き続けた日もありました。

そして仕事を続けながら、初めて経験する介護で、大忙しに。区役所に何度も足を運び、ケアマネジャーさんを探す。要介護認定を受け、さあデイサービスはどうする? ショートステイは? と、ヘトヘトになりました。日々のあれこれがストレスとなって積み重なり、心臓に負担をかけていたのでしょう。

自分は健康そのもの、病気なんかしない。自信満々でそうタカをくくっていた。でも、60代半ばになってようやく悟りました。私も人の子、病気もするし、確実に歳をとっているのだと。