『やさしい猫』(中島京子・著/中央公論新社)

5年間『源氏物語』の現代語訳を行って『タラント』へ

中島 そもそも角田さんは『タラント』に着手されるまでの5年間、『源氏物語』の現代語訳に取り組まれていましたよね。以前、ある大学の先生を取材したとき、「一度、源氏物語に関わった作家は、その後も源氏を引きずって作品を書き続けるしかなくなる」という話を聞いて。

角田 なんですか、それは(笑)。源氏の呪い?

中島 怖い話でしょう(笑)。まあ、源氏以降の文学が、いかに源氏の影響を強く受けているかということをその先生はおっしゃっていたんですが、『タラント』を読んだとき、びっくりしたんですよ。「角田さん、すごい。源氏にまったく影響されていないよ!」って。(笑)

角田 ありがとうございます。『読売新聞』の朝刊で連載していたんですが、同時期に中島さんは、夕刊で『やさしい猫』を連載されていましたよね。『やさしい猫』は日本の入管制度のあり方や移民の問題が背景に描かれているので、「朝は難民、夜は移民の話を読んでいる」とSNSでつぶやいている読者がいたのを覚えています。(笑)

中島 確かに。でも、たまたまですよね。私たち、事前に相談なんてしていませんから。