幕内上位の土俵が朝乃山を求めている
日本相撲協会の新型コロナウイルス対策ガイドライン違反で出場停止になり、幕内から陥落した二人の力士、竜電と朝乃山。二人の優勝は、混乱の場所を見ている相撲ファンの救いだった。
元小結の竜電は、復帰してから番付を上げ、今場所は十両筆頭として活躍し、12勝2敗で14日目に十両での優勝を決めた。来場所の入幕は確実といえる。
6場所出場停止となった元大関・朝乃山は、三段目22枚目で今場所から相撲を取り、13日目に7戦全勝、三段目で優勝した。怪我なく元気に番付を上げ、大関に戻り横綱を目指して欲しい。幕内上位の土俵が朝乃山を求めている。
そして混沌とする今場所を盛り上げたのが、ここのところ不甲斐ないと言われた大関の貴景勝と正代だ。貴景勝は先場所8勝して3大関カド番という悲劇をのがれたが、今場所は優勝にもからみ11勝。カド番の正代は初日から1勝4敗だったが、逸ノ城を降し、照ノ富士にも勝った。千秋楽には関脇・若隆景を負かして10勝をあげた。立ち腰なのに相手にドドッと体を寄せる迫力、あきらめない土俵際、強い正代が戻ってきた。
正代は間垣親方(元横綱・白鵬)に、「きちんと汗をかいて、四股を踏んで土俵にあがるように」と場所中にアドバイスされたとNHKアナウンサーに答えたそうだが、今までは準備運動不足だったのだろうか?
千秋楽の正面解説の北の富士さんと向正面解説の舞の海さんは、この正代の活躍を予想できなかったことで「正代に謝りに行こう」と話して盛り上がっていた。
カド番の大関・御嶽海は2勝したところで所属する出羽海部屋にコロナ感染者が出て休場し、その後本人の感染も発表され、残念だった。
大問題は来場所の番付だ。場所後に審判部で協議するそうだが、出場して勝ち越した力士は上にあげ、勝ち越し前にコロナ休場した力士は据え置きとすると、東西に分けた伝統的な番付表がおかしくなるのではないか。
番付表のデザイン変更をするしかないのだろうか。
力士の誰一人として、コロナによる損な思いをさせてはいけない。
ここがコロナ禍に負けない大相撲の知恵の見せどころである。