圧倒的な迫力

現在100種ほど見つかっているウェタのうち(未発見のものがまだまだいると考えられている)、ジャイアントウェタと呼ばれる一群の種類は今のところ11種に分けられていて、大きなものになると体長8センチ、長い脚を伸ばした状態なら15センチにもなる。

『カラー版-へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅』(著:川端裕人/中公新書ラクレ)

属名のDeinacridaは、「恐ろしいバッタ」という意味だ。最大種のリトルバリア島ジャイアントウェタ(Deinacrida heteracantha)は、1839年から43年にかけて南極探検を行ったジェイムズ・ロスの艦隊がニュージーランドに立ち寄った際に収集した標本から記載された。発見の時点で、すでにニュージーランド本島からは姿を消しており、沖合の島でしか見られなくなっていた。

マオリがニュージーランドにやってきたのと一緒にネズミも入ってきたので、「無脊椎ネズミ」たちは、本島では「脊椎ネズミ(vertebrate rats)」たちに居場所を奪われてしまった。

それほど希少な生き物なので滅多に会えるものではないのだが、ある時、あっさり出会ってしまった。正直、びっくりしたし、幸運に感謝もした。

やはり、実物を見ると、圧倒的な迫力で、とうていバッタとは思えない。「無脊椎ネズミ」としての、現実を超えたリアリティがある。

見つけた場所は、北島と南島の間の海峡域に浮かぶモウド島。希少生物の保護区として島全体が環境当局の管轄になっている。カカポに会うために訪れたこの島を、一人で歩いていたら、下生えの間に飴色の輝きが見えた。立ち止まってよく見ると、それがジャイアントウェタだった。