カサコソ音をひびかせる日が来るのを願う

その後、ニュージーランドの離島を旅することが何度かあって、その都度、ジャイアントウェタを見かけた。絶滅危惧種を他の島にも移してリスクを分散させる努力がなされており、だから、ぼくが飛べない鳥を目当てに様々な島を訪ねる中で、ジャイアントウェタにも会う機会があったのだった。

いずれも、ジャイアントウェタを探そうとしていたわけではなく、森の道を散策している時に、不意に足元で見つけるような偶然の出会いだった。

ニュージーランドの南北の本島ではもう見られないのに、沖合の島に行けば出会いを期待できる。それが現状である。

かつて超大陸ゴンドワナの一部だった古ニュージーランド、いわゆる「ジーランディア」からの生き残りだとされるジャイアントウェタが、在りし日のようにニュージーランド全土で、林床にカサコソ音をひびかせる日が来るのを願ってやまない。

※本稿は、『カラー版-へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。


カラー版-へんてこな生き物-世界のふしぎを巡る旅
2022年8月9日発売

可愛い小動物ハニーポッサムは、巨大な睾丸の持ち主。水棲哺乳類アマゾンマナティが森の中を「飛ぶ」って? ペンギンなのに、森の中で巣作りをする「妖精」。まるでネズミ! 手のひらサイズの巨大な虫。かわいかったり、美しかったり、ひねくれていたり、奇妙だったり、数奇な運命に弄ばれたり、とにかく常識を軽く超えてくる生き物たちの「へんてこ」ぶりを活写。30年以上にわたり研究者やナチュラリストと共に活動してきた著者が、新しい科学的なトピックをまじえて約50種の生態を楽しく紹介する。200枚超のオリジナル写真を掲載。生き物とヒトとのかかわりの歴史を垣間見る意味で、古い博物画も収載した。かくも多様な生き物たちが存在することに、「あっ」とセンス・オブ・ワンダーを感じずにいられない一冊。