それに気をよくした良子から「これからも料理をつくります!」と言われたウシが、「いや、あの…」と目を伏せたのには吹いた。ヒロイン不在でも楽しませてくれた。これぞ群像劇である。
群像劇としては和彦の役割も重い。愛との件では良いところがなかったが、沖縄戦の取材を始めた。第72話で遺骨収集を続ける嘉手刈源次(津嘉山正種)から話を聞いた。9月30日の最終回まで、和彦は沖縄の真実を視聴者に伝える役割を担うのだろう。
房子と三郎の一代記も見たい
「アッラ・フォンターナ」オーナーで暢子の大叔母・大城房子(原田美枝子)と、横浜市鶴見区の沖縄県人会会長・平良三郎(片岡鶴太郎)も群像劇メンバーとして魅力的だ。房子は表向き厳しいが、内面は慈愛に満ちている。偽善者ならぬ偽悪者。甥の賢三の急逝を知ると、「子どもを1人引き取る」と優子に伝えたのは記憶に新しい。嘉手刈の活動には資金を援助している。
房子は小学校を出ると働き始め、屋台を引き、やがて銀座に店を構えた。独学で教養も身に付けた。まさに立志伝中の人物。房子を主人公としたスピンオフ作品が見てみたいほどである。
三郎も興味深い。第27話。上京したばかりの暢子が鶴見に賢秀を探しに行ったものの、見つからない。途方に暮れていると、三郎が家に泊め、食事も出してくれた。暢子はいつもながら礼節に欠いていたが、さらに下宿先として沖縄県人の集う居酒屋「あまゆ」を紹介してくれた。「アッラ・フォンターナ」への就職を斡旋してくれたのも三郎だ。