人間の大きさを感じさせる。第29話。「あまゆ」で県人会の工員2人が大ゲンカになった。勤務先の組合の集会に出るか、出ないかで揉めていた。すると三郎は仲裁に入り、「集会に出ないほうが悪い」と断じた。「組合というのは県人会と同じ。弱い者が助け合うためにある」(三郎)

 簡単な問題ではないから、すぐにこう断言できる人は珍しい。「弱い者が助け合う」。三郎の信念なのだろう。この男の一代記も見たい。

 第76話から登場中の和彦の母親・重子(鈴木保奈美)も面白い人物だ。戦前に亡くなった中原中也の詩集を愛読し続けているのだから、かなり拘りの人だろう。

 和彦から暢子との結婚の許しを求められた重子は笑顔を浮かべながら「許しません」。暢子の目の前で断じたのだから、強心臓である。

 さらに重子は暢子と愛と比較した。嫌味な人だ。暢子の身辺調査の結果まで口にした。失礼だ。これは手ごわい。そもそも重子の攻略法を考えずに結婚の約束をした和彦は甘ちゃんである。さて、どうなることやら。