(イラスト:丹下京子)
昨年末、8年ぶりに内容が刷新された「三省堂 国語辞典」。今回の刷新で『コギャル』『着メロ』『プロフ』『MD』など約1100語が国語辞典から《消える》言葉として話題になりました。また新たに『黙食』『ソーシャルディスタンス』『ぴえん』など約3500語が追加され、言葉はその時代を表し、その時代を生きた人達が共有してきたものと言えるでしょう。
千葉県に住む理子さんは、そんな《青春時代の言葉》で職場の同世代の同僚と意気投合。DV夫との離婚で疲弊した心も満たされて、楽しい日々を期待していましたが――

《大きな玉ねぎ》が縮めた距離

酒癖の悪いDV夫と離婚した後、私は四十路ぎりぎりで学習参考書を作る小さな会社にパートで採用された。配属された部署のメンバーはほぼパートの女性で、雰囲気はさしずめ主婦の女子高といったところ。その中で特に目立っていたのが、B女史だった。

10歳ほど年上だろうか、一目でパート内のボスとわかる。大きなイヤリングを揺らしながら新人の私に、「あの人はすぐに告げ口をするから危険よ。あの二人は仲がよさそうに見えて、実は……」と耳打ちしてきた。この人に離婚の経緯を知られては終わりだ。そう警戒心を抱かずにはいられなかった。

私の予感は見事的中。B女史は私の境遇を勝手に妄想し、言いふらしていたのだ。私は《年下のヒモの彼氏はいるが、独身主義。田舎の両親はまだ生きている》ということらしい。実際の私は、早くに両親を亡くした、バツイチ子なしで賃貸ワンルーム暮らしの独身女だ。

この一件以来、私はいっそう無口になり、まわりとの関わりを極力避けた。B女史はそんな私を「根暗地蔵」と名付け、からかいや無視などの嫌がらせを繰り返してきた。