入社してから半年ほど経った頃、同じ部署の梅田さんとペアを組んで仕事をすることになった。同年代らしい梅田さんは、いつも黙々と仕事をこなし、会議や雑談では聞き役に徹している。チラッと、私と似ているかもという思いがよぎった。

ある日、梅田さんが「週末、お花見どうですか？」と声をかけてくれた。嬉しくて、「いいですね。千鳥ヶ淵あたりとか」と声が弾む。

梅田さんは探るように笑って、続けた。

「《大きな玉ねぎ》の近辺ですね」

「そうそう。あのペンフレンドは、結局会えないんですよね」

懐かしの名曲『大きな玉ねぎの下で（爆風スランプ）』のフレーズが世代を表す符牒（ふちょう）となり、一気に打ち解けた。週末、九段下の桜を眺めながら、私たちは缶ビール片手に他愛のない話をつまみに笑い合い、友だちができた喜びに心が満たされるのを感じた。それから頻繁に遊びに出かけるようになった。