時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは50代の女性からのお便り。喧嘩ばかりの両親を見て、離婚すればいいのに、と思っていた子どもの頃。しかし、大人になり実際自分が離婚することを考えてみると――。
母の選択
「結婚ってなに」――不仲な両親のもとで育った私にとって、子どもの頃からの素朴な疑問だった。喧嘩ばかりの両親を見て、離婚すればいいのにとずっと思っていた。
先日、仕事先で感じのいい女性に出会った。意気投合して休憩時間にお茶を飲みながら、意外な話を聞いた。引っ越し業者が見積もりに来るから、定時に退勤したいと言う。離婚に伴う転居だそうだ。自分で決断したことだが、現実になった今、経済的に将来がとても不安だ、と話す。
私は、自分が同じ立場になったら、と想像してしまった。狭いアパートでの一人暮らしは孤独だ。病気や事故で入院することになったらどうしよう。たいした経験も資格もない私がいくら稼げるだろうか。収入が減れば、明らかに生活レベルは下がる。
私は気づいた。結婚とは、最高最強の生活保障だと。社会的にも経済的にも、夫に守られている。
母だって、腹の立つことや不満はたくさんあっただろう。それでも、父と夫婦でいることを選んだ。そんなものなのかもしれない。母にとっては、賢い選択だった。
そして、父が亡くなって、今、母は一人。父を愛していたことに気づいただろうか。