ブリティッシュロックの影響

アメリカの音楽史に“ブリティッシュ・インヴェイジョン”というものがある。要するに“イギリス音楽の侵略”だ。

これは2度あって、最初は60年代のビートルズ、ローリング・ストーンズの登場。次は80年代のデュラン・デュランやカルチャー・クラブといった、ニューウェイヴやニューロマンティックと呼ばれるバンドの登場である。

第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンのバンドは、日本のバンドにも大きく影響を与えた。YMOや一風堂、そこからのBOOWYやBUCK-TICKも広義の意味ではその影響下にある。ただそうしたブリティッシュバンドのサウンドの要となっていたのは、シンセサイザーだった。未来を感じさせるその音色が従来の音楽にはない新しさを漂わせていたのである。

しかしながら、BOOWYもBUCK-TICKも、メンバー編成にシンセサイザーやキーボードのプレイヤーはいない。本来鍵盤でやることをすべてギターでやろうとしていたのだ。

布袋寅泰はギターを使ってギターらしからぬサウンドを奏でた。今井寿はギターシンセサイザーにまで手を伸ばした。

ギターシンセの使い手といえば、当時動物の鳴き声をギターで再現するテレビCMが話題になった、エイドリアン・ブリュー(ex. キング・クリムゾン、ex. トーキング・ヘッズなど)がいたが、今井はそうした奇を衒(てら)った使い方ではなく、あくまで楽曲におけるサウンドの幅を広げる楽器としてのシンセサイザー的な使い方をしていた。

BOOWYやBUCK-TICKといったブリティッシュロック影響下のバンドは空間系のエフェクターを駆使して、ギターサウンドに広がりを出すことに重きを置いていた。

BOOWY中期の布袋サウンドの代名詞でもあるローランドのギターアンプ、JC(ジャズコーラス)のコーラスをかけたクリーンなステレオサウンドがそれに当たるわけだが、それはイコール、この時代のヴィジュアル系黎明期のギターサウンドを象徴するようになる。

エフェクト機材などを巧みに使用し、ギターらしからぬ多彩な音を奏でるギタリストを指す、“エフェクタリスト”という言葉も生まれた。