『わたしの言葉から世界はよくなる コピーライター式ホメ出しの技術』(著:澤田智洋/宣伝会議)

「呪いの時代」から「祝いの時代」に

今日もツイッターには、百花繚乱のダメ出しが咲いています。政治家に対して、企業に対して、インフルエンサーに対して。恐ろしい量のダメ出しが蔓延しています。

面と向かっては言わないことを、匿名だから、直接会う機会はないからと、辛辣で悪意のこもった言葉や表現で、誰かを攻撃する。私が標的になっているわけではないのですが、こちらも傷つきます。憎しみのこもったネガ言葉は、触れた人もケガをしてしまいます。

ツイッターだけではありません。企業では上司が部下の働き方にダメ出しをし、家庭内では妻が夫の言動にダメ出しをし、OB訪問では社会人が学生にダメ出しをしています。ダメ出しの総量が増えている実感があります。なぜでしょうか?

一つには、「ダメ出しするのは簡単だから」というのがあります。相手が何を言っても、しかめっつらで「おもしろくない」「俺はどうかと思うよ」「考え直してきて」と言うのは実に簡単です。インスタント・マウンティングの完成です。

また、超情報化社会の到来により、それぞれが日々大量の情報に触れるようになり、各自が「自分ってちょっと賢いのかも」という勘違いの全能感を抱き始めたことも大きいと思います。いわゆる一億総評論家、総ツッコミ社会です。それにより、自分の価値観からズレた人を見下したり、冷笑したり、口撃する傾向が強まっています。

これは「呪いの時代」と言えます。マイナスな言葉を相手に発することにより、生気を奪い取り、とことん弱らせる。ダメ出しは呪いです。社会がどんどん窮屈になってきていると感じるのは、呪いが蔓延しているからかもしれません。

例えば「意識高い」という言葉は、やる気と好奇心を奪ってしまう、ひどい言葉です。相手の思考を縛り、行動範囲を狭め、可能性を削っていくのが「呪いの言葉」なのです。

だからこそ意図的に、言葉の力で「祝いの時代」をつくるべきではないでしょうか。

私は知り合いから、「あのときもらった言葉を今でも覚えている」「あの言葉が糧になっている」と言われることがよくあります。日常的に祝いの言葉をつくり、大切な人に届けることを心がけているからです。