底に流れているのは「できるだけ安く」という課題

これまでの私は不相応な家賃のマンションに住み、不相応な買い物をして、バランスの取れた食生活どころか、仕事に追われ身体を壊したこともあります。

劣等生だからこそ、このままではどうなるかわからないと始めたプチプラ生活です。

始めてみると、頭は使うわ、身体は使うわと、まさに心身ともにフル回転させる必要がありました。

安いと美味しいのバランスが取れているメニュー、自分に似合うファッションとは? 築40年の中古だけど、できるだけ快適に、自分らしく過ごすためには? 必要とされているモノは本当に必要なのか、なぜこれが欲しいと思うのか、「欲しい」と「必要」はどう違うのか。なぜ同じ材料を使っているのに、昨日のメニューは美味しくて、今日は失敗なのか――。

日々、いろんなことを考えることになりました。

すべての選択の底に流れているのは「できるだけ安く」という課題です。この「課題」があるからこそ、持っている能力を使い切るわけです。

紫苑「節約とは限りあるお金をどんなふうに遣うかを考え抜く知的な行為なんですね」(写真提供:Photo AC)

「いろいろ考えること」は日々の生活にとどまらず、外の世界にも広がっていきます。たまに人と外食することがあると、「これは原価がこれくらいでできる」と分析するようにもなりました。そこからオーバーに言えば、社会が見えてきます。

「節約」は知的な作業です。経済だけではなく、心理学や味覚やファッションのセンスなど、それこそ自分の持っている知恵や経験を総動員させていることに気づきました。