辞めたくなるタイミング

ラインダンスの振付け中に、先生が言った言葉を今でも覚えています。
「これから君達はきっといろいろな壁にぶつかる。 
それは3年ごとに感じる事かもしれない。
3年ごとに辞めたいと思うだろう。
みんなそんなタイミングで、そう考えたりするものだ」

その当時、その話の真髄をあまり理解していないながらも、
でもなんとなく、ずっとその言葉は私の中に残っていました。

そして3年後、その言葉の意味を実感することになります。
同期みんなが出ている場面に、私だけ出られなかった事がありました。
「何で私は出られないんですか?!」
などと聞きに行く勇気なんて当然ありません。
理由は自分の力不足なんでしょうが、
私は宝塚に不釣り合いで、必要とされていないんだろうな、
そう思うようになりました。

でもその時、あの言葉を思い出しました。
こんな風に考えたり思ったりするのは、私だけではなくて、
みんなも先輩達もきっとこういう経験をしてきたんだろうなと。

そのあとも、喉を潰し声が出なくなった時や、
役が理解できなくて苦しかった時、
小劇場の公演に選ばれず、みんなが舞台に立っているのに、自分だけお休みになった時など、もう辞めたほうがいいんじゃないかと思うことが、何年か毎に訪れました。

すぐに逃げ出したくなる癖が出る度、
今私が何の挑戦もせずに新潟に戻ったら、きっと何をやっても同じ事の繰り返しになる。
悔しい思いを乗り切るための行動をして、それでもダメなら諦めよう。
何もせずに逃げ出してはダメだ!
何度も思い直しました。
今はきっとそんなタイミングなんだろうと。
何度となくあの言葉を思い出していました。

そして、私が私をどこかで信じていました。
踊ることが、舞台が好きで、小心者で、泣き虫で、後ろ向きな自分の
意地なのか、あきらめの悪さなのか、かすかな希望だったのか
無根拠な小さな自信を、私の未来を信じていました。

宝塚歌劇の生みの親、小林一三先生の銅像。劇場の前でいつも見守ってくださっています。