「コウさんのレシピは、身近な材料で作ることができ、使用する調味料もシンプル。そのわかりやすさ、普通さに助けられたという方も多いのではないでしょうか。」

食卓の問題には《男尊女卑》が根底に

コウ 日本の食卓には、「昨日は煮物だったから今日は焼き物に」とか「料理は手間暇かけてこそ愛情」など、「こうしなきゃいけない」という暗黙のルールやプレッシャーが内からも外からもありますよね。

もともと料理好きの人も、それで時にしんどくなってしまう。講演会でもお話しするのですが、「和洋中からエスニックまで、これほどワールドワイドな料理が食卓にあがるのは日本くらいですよ」って。

酒井 確かに。しかも、それぞれの料理に合わせて、食器や調理器具が揃っていますよね。数年前に流行ったタジン鍋とか。(笑)

コウ テレビの仕事で世界各国300くらいの家庭にお邪魔してきましたが、日本と本場の北アフリカ以外でタジン鍋がある家庭なんてあまり見たことないですから。(笑)

酒井 そういう私も、このコロナ下で火鍋用の鍋を買ってしまいました……。

コウ ええっ(笑)! でも、日本の女性たちはさまざまな調理器具を駆使して、専門教育を受けたかのようなハイスペックの料理を作っている。スポーツでいえば、世界ランキングトップクラスの腕前ですよ。

だから自信を持ってほしいけれど、反面、「そうするのが当たり前」「できるのが当たり前」という状況は異常だという意識も必要だと思うんです。

酒井 そこまで頑張っているのに、家族からはあまり褒められず、同じメニューが続けば「また?」と文句を言われ……。家族への愛情があればやって当たり前と見られがちで、労働として評価されていません。世界的に見ても、女性が料理をするケースのほうがまだまだ多いのでしょうか?