コウ そうですね。男女別の料理頻度を世界各国で調査したデータを見ると、ジェンダーギャップがあまりないとされている国でも、女性は男性の2倍、日本は5倍も料理をしているらしいのです。

言語も宗教も違う、さまざまな国の台所に入って感じたのは、食卓の問題には、いまだに《男尊女卑》の考えが根底にあるということ。そこがフラットにならないと、食卓やジェンダーの問題の根本的な解決に繋がらないと実感しています。

酒井 家事をする人たちが感じる《しんどさ》は、家事という《作業》に対してだけではない部分が大きくある──。よくわかります。コウさんご自身は、家事の分担はなるべく50%ずつと考えているそうですが、ご両親はどうだったのでしょうか。

コウ 両親は韓国で生まれ、日本に移住してきました。父が長男だったこともあり、親族が集まる行事や法事の多い家で、母は4人の子どもの世話に加え、ひとりで家のことを切り盛りしていたんです。

父は、儒教の教えが色濃い昔ながらの韓国の価値観を持つがゆえに、《どっかと座っているのが男の仕事》とばかりに家のことは一切しない。父のことはとても尊敬していましたが、その反面、「なんで手伝わないんだろう」と素朴に思ったし、違和感がありました。

酒井 昭和の日本のお父さんたちと同じですね。

コウ 韓国の男性は兵役があって、裁縫も料理も洗濯も訓練を受けるため、身の回りのことは完璧にできるんです。その証拠に、僕が高校の頃に単身赴任をしていた父の家へ遊びに行った時、美味しいチゲを手際よく作ってくれたことがありました。

「えっ、なんで料理できるの?」と聞いたら、「兵役で訓練されたから」って。要は、《家事は男がやるものではない》という考えでやらなかった。そんなこともあって、反面教師じゃないですけれど、僕は料理や家事を進んでするようになりましたね。

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