不摂生がたたり、後年一気に体にガタが

初めて長編連載のチャンスをいただいて、『ベルばら』が始まったのは、まだ海外旅行が高嶺の花だった時代。物語の舞台は18世紀後半のフランスでしたが、現地に取材など行けるはずもなく、今のようにインターネットもありません。手がかりは書籍のみ。東京・神田の古本屋さんでフランス関連の文献を買い集め、蔵書が充実していた小学館の資料室にもお世話になりながら、描き進めました。どうしてもわからないことは、専門の学者にお聞きしたりも。想像で描いたために、ありえないミスもしました。作品を見るとわかるんですが、街の遠景に、当時はまだなかったサクレ・クール寺院が。まあ、エッフェル塔を描かなかっただけよかったのですけど。(笑)

2年未満の連載中には、一から絵の勉強をしました。私は自己流で漫画を描いてきたので、とにかく下手だったんです。思い通りに描けないもどかしさもあって。美大の学生さんからデッサンを学んだおかげで、連載後半はぐっと描きやすくなりました。

とはいえ、週刊連載で1回分が23ページ。最初は1人で描いていたものの、あまりの作業量の多さに途中からアシスタントさんに来てもらうようになりました。締め切り前になると、2~3日の徹夜は当たり前。それなのに並行して63ページの読み切りまで描いていたのですからね。我ながら若かったと思います。ただ当時の不摂生がたたり、後年一気に体にガタがきたので、無理はするものではありません。

オスカルの最期の場面(C)池田理代子プロダクション

萩尾望都さんや木原敏江さんなど、同時期に活躍していた漫画家仲間との交流は、創作活動の大きな励みになりました。当時、彼女たちは埼玉県飯能に住んでいて、私は千葉県の柏在住。お互いに忙しかったためなかなか会えず、電話で話すのが精いっぱい。最長で8時間、話し続けたこともあります(笑)。お互いに描きたいものがまったく違うので、いい刺激を受けましたね。