逆風の中、心の支えになったのはモハメド・アリの言葉

逆風の中で心の支えになったのは、プロボクシングの元世界ヘビー級チャンピオン、モハメド・アリ(カシアス・クレイ)の存在です。彼はベトナム戦争への徴兵を拒否したことで、国からタイトルとプロの資格を剥奪されました。「なぜ1万6000キロも離れたところに行って、何の関わりもない東洋人を殺さなきゃいけないんだ」とは彼の言葉。圧力をかけられても信念を貫く姿に強く惹かれて……。私もぶれない軸を持ちたいと強く思いました。

中学卒業時に恩師から贈られた、「弱者の言葉は常に正しい。かかる社会的真理を追究されたし」というメッセージも忘れられません。この言葉がなかったら、貴族であるオスカルが民衆の側につくこともなかったでしょう。

そして、何よりも大きかったのは読者からの声です。もともとは子どもの読者に向けて描いた作品。ところが次第に、男社会で闘う男装の麗人・オスカルの生き方が、大人の女性、特に働いている女性の共感を呼んだようです。これは、予想外の反響でした。

また、それまで「漫画など読むな、学校にも持ってくるな」と言っていた先生が、「『ベルばら』を読みなさい」と生徒に薦めたとか。そういう話を聞くたびに、描き続けて良かったと心から思います。

2014年からは40年ぶりに、アランやフェルゼン、ロザリーなどを主人公とした「エピソード編」を発表しました。今はもう、漫画にしたいテーマはありません。しいて言うなら、生きているうちに2冊目の歌集を出すことが目標かしらね。

私もいつか世を去りますが、作品は残る。この先も『ベルばら』を読み継いでいただけたら、これほど幸せなことはありません。

(C)池田理代子プロダクション

誕生50周年記念 ベルサイユのばら展
-ベルばらは永遠に-

東京会場:2022年9月17日(土)~11月20日(日)
東京シティビュー(六本木ヒルズ森タワー52階)

大阪会場:2022年11月30日(水)~12月12日(月)
阪急うめだ本店 9階阪急うめだギャラリー

公式サイト:https://verbaraten.com/