(イラスト:谷口シロウ)
厚生労働省によると、離婚件数に関する2020年度の統計で、20年以上同居した末に離婚する「熟年離婚」の割合は21.5%と、過去最高になったそうです。長山ゆかりさん(仮名・兵庫県・薬剤師・59歳)も、夫の裏切りを知りながら、まじめに生きてきたのに、気がつけば修羅場のまっただ中!思わぬ不運に足もとをすくわれて――

結婚後10年で言葉のDVが

昨年の夏、夫の長年の浮気が原因で離婚した。元夫は60歳。25年前に見合い結婚し、大学生の長男と長女がいる。結婚当初、夫は建設会社の専務をしていた。数年後に社長になると、経営判断を誤って瞬く間に倒産。その後は知人の会社で働いた。

結婚してすぐ、夫には二面性があることに気づいた。外では社交的で話術にも長けているが、家では私をバカにして「お前とは話をしたくない」と言う。それでも社長だったときは自由にお金を使え、チヤホヤされて上機嫌だったが、倒産後は一転して、人に頭を下げたり持ち上げたりするのが屈辱だったようだ。私に「オレの周りはバカばっかりだ」と愚痴っていた。

10年経つ頃には、言葉のDVが日常的になり、私が気に入らないことをすると、機関銃のように罵声を浴びせられる。反論したら屁理屈が10倍くらい返ってくるので、言い返す気も起こらない。しかも、灰皿やテレビのリモコンを投げつける。実の母親にまで物を投げつける人だから、自分より下と思った相手には本性を隠さないのだろう。

夜遊びも好きで、「お前が作ったものなんか食べたら病気になる」と暴言を吐き、毎晩午前様。しかも、ワイシャツに口紅や香水をつけてくる。

そして10年ほど前、夫はハルミと知り合った。ハルミの会社の経理を助けながら、夜の営みの手助けもしていたらしい。そのうち夫はハルミと2人で会社を立ち上げ、ハルミが社長、夫が専務となり、数ヵ所に介護施設を設けた。と同時に、週2回のホテル通いも習慣になり、高級レストランでの食事や宿泊の費用は会社の経費として処理するようになったらしい。

仕事は順調だったので、出張にかこつけて春に沖縄、秋にハワイ、翌春はシンガポールと不倫旅行を続け、超一流のオーシャンビューのホテルに連泊して快楽を満喫したようだ。しかも2人は、今年6歳になる娘までもうけた。ハルミの家族は専業主夫の夫と2人の息子、浮気してできた娘。彼女の夫が気づかないはずはないのだが……。