家計をはっきりさせないことが勝手な憶測を呼ぶ

家庭裁判所で離婚調停に関わっていた方がおっしゃるには、「夫婦のきずなが薄れていく原因は性格の不一致とか浮気とか言われるけれど、最後の分与で一番揉めるのを見ていると、要はお金ですよ」。

性格も金銭感覚もちがう2人が一緒に暮らす以上、絶えず現状の把握が大切なはずなのに、「お金の話」を避けてきたために水面下で不信感だけが大きくなりがちだというのです。

お金は数字で表すもの。それなのに私たちはつい「お金がない」とか「お金がかかる」とか抽象的な表現をしがちです。

家計はそういった「雰囲気」ではなく「数字」で表すものなのに、はっきりさせないことがかえって勝手な憶測を呼び、お互いの感情と複雑に絡み合い、夫婦であっても気持ちに垣根ができるもとになるのではないでしょうか。

家計簿に記された数字には、その多少にかかわらず「温もり」があります。人の手で淡々と記された真実の数字だからです。

隠しごとのない数字を真ん中に話し合えば、愛情の亀裂を防げるかもしれません。殊(こと)に夫婦の信頼関係を築くうえで、家計の透明性は欠くことのできない基盤ではないでしょうか。