ある程度歳を重ねると避けられないのが親族との別れ。本来、夫の祖母の死を悼むはずだった葬儀が、まったく想定外のことに振り回されることになったというのが45歳の上原みずほさん(仮名)です。理由なき「親戚格差」がもたらしたものとはーー。
血縁関係の濃さでつき合いが決まる
私が体験したことにタイトルをつけるならば、「葬式狂想曲」だろうか。
主な登場人物4人を紹介すると、まず、亡くなった夫の祖母。本来は今回の主人公になるはずだった人。
2人目の義父は、女が続いた後の長男として生まれ、わがまま放題に育てられたので、つねに「俺が一番!」という性格。そのくせ姉たちと娘にはめっぽう弱い。
3人目は義妹。一人娘で義父にいまも溺愛されているものの、配偶者とは不仲。
そして、4人目は私の母なのだが、はっきり言って「毒親」で、仲良くしている人間の仲を引き裂くことに喜びを覚えるタイプだ。とにかく目立ちたがりで、そのためなら嘘をついても、人を傷つけても気にしない。
話は数年前にさかのぼり、舞台は〈陸の孤島〉と呼ばれる田舎。石を投げれば親戚に当たる、という血縁関係が濃い地域で、義祖母が息を引き取った。暑い夏の日、県外に住む私たち家族が夕食をとっていたときに電話が鳴った。
「おばあさんが亡くなったの」
義母からだった。夫の実家はいわゆる地元の名家。義祖父は元議員で、恩恵を受けた人間は数知れず。その妻の葬儀だから田舎ではちょっとしたイベントだ。
義祖母はなかなか自由な人だった。義祖父が一人っ子だったので小姑の苦労はなし。晩年も入院介護は嫌だと自宅療養を貫き、世話は嫁である義母にすべて任せきり。私には優しいおばあちゃんだったが、息子の嫁たちには厳しかった。