中村 最後に交わされた言葉は覚えていらっしゃいますか。
猪木 彼女はお腹が張っていたんで、夜中に痛みが出ちゃうとね、さすりはしませんけど、私はちょっとパワーがあるんで、手を痛いところにかざすと多少楽になるんです。そしたら安心した表情になって微笑んでくれました。だから最後の言葉は「ありがとう」だったと思います。
中村 そうでしたか。
猪木 私のプロレス同期、ジャイアント馬場さんもそうですけど、何十人もの選手がいましたが、ほとんどがすでに亡くなりました。だから60代後半になったとき、もう自分もそんなに長生きはできないと覚悟を決めていたんです。何年生きるかわからないけど、人にはそれぞれの寿命があります。彼女は自分の命を縮めて、私の時間を延ばしてくれたのかもしれません。
中村 いいお話ですね。
猪木 家内に先立たれ、死や人生、愛情など、改めて深く考える機会を得ました。ひたすら突っ走ってきた自分は、いろんなことをじっくり振り返ることがなかったような気がしますが、それなりに歳を重ねて、人生ってなにかなって思いますよね。人生って簡単にいうけど、それぞれのあり方があって、これからまたきっと考えるのかな。
チャレンジし続けることが人生
中村 猪木さんは、最近の体調はいかがですか。
猪木 だいぶ良くなってきたんだけれど、入院してから歩けなくなっちゃって。いまは歩くのは歩けるようになったんですけど転ぶのが心配で、もうちょっと足腰を鍛えたい。そんな感じでいまちょっと(リハビリに)燃えているんです。
中村 それは嬉しい。猪木さんが元気だと、私たちも元気をいただけるような気分になります。
猪木 いや、一番失敗したのがね、元気を売り物にしたことだよ。
中村 (笑)
猪木 「元気ですかー!」っていっても、今回みたいに元気じゃなくなることもあるでしょう(笑)。葬儀の翌日に『さんまのまんま』の収録があって、正直きついなと思いながらもやりきりました。
中村 バラエティ番組ですし、猪木さんは元気なイメージを求められていますから。