渡部 地球の大気中の二酸化炭素濃度が、20世紀後半から加速度的に上昇しているのは観測事実です。産業革命以降の150年あまりで、地球の平均気温が約1.1度上昇したこともわかっています。温暖化を解決するためには、その原因を突き止めないといけませんよね。問題は、その原因が人間活動によるものなのかどうかということでした。
酒井 というと?
渡部 気候というのは、太陽の活動や火山の噴火といった自然現象によっても変わるものだからです。そういったことをふまえても、人間の活動のせいで気候が変化しているのか、という問いがありました。
ですが、1988年に国連のもとに設立された組織IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が「人為起源の温室効果ガスは気候変化を生じさせる恐れがある」と90年に初めて報告書を公表し、2021年にはとうとう「人間活動が温暖化を引き起こしているのは疑う余地がない」と断言するに至ったのです。
酒井 電気を使う、工業製品を作る、車や飛行機に乗るといった、われわれ人間の活動が二酸化炭素を増やし、温暖化に繋がっているとはっきりしたのですね。初歩的な質問で恐縮なのですが……、二酸化炭素が大気中に増えると、なぜ地球の温度が上がるのかを改めて教えてください。
渡部 まず、太陽からの日射(エネルギー)が地球に届くと、地球はそのエネルギーを赤外線として宇宙へ放出する仕組みがあります。その時、地球を覆う大気の温室効果によって、エネルギーの一部が大気を通過せずに地表面に戻るため、地球が温められるわけです。
大気は窒素や酸素、水蒸気、二酸化炭素などで構成されているのですが、二酸化炭素などのいわゆる温室効果ガスは赤外線を吸収するため、二酸化炭素が増えるとその分エネルギーの地表面への戻りが増えて温度が上がっていくということです。
酒井 なるほど!
渡部 植物や海が二酸化炭素を吸収してくれますが、吸収する以上に二酸化炭素が増えてしまったのが現在の状況です。