日本が熱帯地域になる日
酒井 温暖化によって心配されることの一つが、海面の上昇。南太平洋の島国ツバルでは、すでに内陸まで浸水しているとのことですが、気温と海面の上昇にはどのような関係があるのでしょうか。
渡部 気温が高くなって北極の氷が溶けることで海の水が増えるから、とよく誤解されますが違います。一番の要因は、海水が温まって膨張するからです。
酒井 海の場所によって温まり方が違うと聞いたことがあります。
渡部 そうですね。地上の気温が一様に上がらないのと同じです。ツバルはもともと熱帯気候で、海水の温まり方が強いこともありますが、サンゴ礁でできた島。海に板を載せたような低い土地ですから、海面上昇による影響を受けやすいのです。
酒井 日本列島の周りの海はどうなのでしょうか。私の世代ですと、小松左京さんの『日本沈没』の印象が強く残っていまして……。
渡部 具体的な数字を知らないと、みなさん極端な想像をしてしまいがちです(笑)。海面の水位は、100年あまりで世界平均が20cmくらい上がっています。1年間だと、93年以降に限ってみても3.2mmほど。かなり時間をかけて、ゆっくり上昇していることがわかると思います。この先100年、200年で日本が沈没することは考えられません。
むしろいま、日本で心配されているのは砂浜がなくなっていくこと。波に砂浜がさらわれ、浸食されるという現象が起きているのです。都市化が進んで川から海岸に運ばれる土砂が減っていることも原因の一つですが、世界的な海面の上昇が影響していることも確かだと思います。