ただ舞台と映像では、勝手がまったく違います。最初に「申し訳ありません、経験がないもので」とスタッフやキャストの皆さんに申し上げましたが、実際とんでもないミスをやらかしましたね。(笑)

何台もあるカメラが誰をどう狙っているのかがわからず、ずんずん歩いて行って前に立ちはだかったことも。もちろんリハだったのですが、カメラの方が一瞬カメラから目を外して「えっ……」という顔をされたので、「これ、ダメなんだよね」と口にしましたら、ゆっくりと頷いていました。(笑)

そんな若葉マークの僕に、皆さん本当に優しくしてくれた。主演の小栗旬さんが率先して、そういう雰囲気をつくってくださったんでしょう。

あるとき、「父上は普段、なにを飲むんですか」となにげなく聞かれたので「ワインが一番多いかなあ」と話したら、撮影がはじまってすぐの父の日に、息子や娘役の方たちからワインをプレゼントされましてね。いい記念になるなあと思いつつ、すぐにおいしく飲んじゃいました。(笑)

 

自分も舞台に立ちたいと思ったけれど

歴史上、権力を手にした時政は一筋縄ではいかない存在として知られていますが、ドラマでは三谷さんの意図に沿い、これまでのイメージとは違う時政像を演じることができたかもしれません。気をつけたのは、お客様との距離がある舞台と違い、映像ではやりすぎないようにしたこと。いろいろな方がなさる映像でのお芝居を拝見し、自分なりに分析もしました。

こうしていま、歌舞伎の舞台に1年ぶりに戻ったわけですが、舞台稽古に出たらまるで昨日まで毎日立っていたような気分になった。やっぱり50年もやっていると体に染みついているものなのでしょう。