(撮影=木村直軌)
〈10月15日発売の『婦人公論』11月号から記事を先出し!〉
坂東武者ながらお茶目で憎めない役柄を大河ドラマで好演し、視聴者の心を鷲掴みにした坂東彌十郎さん。歌舞伎をヨーロッパにもっと根づかせたい、と夢を抱き続けるのは、新しい世界を切り開いた先輩方の姿を間近で見てきたからだった。
(構成:篠藤ゆり 撮影:木村直軌)

初めて、1年以上舞台を休んだ

今年1月から放送されている『鎌倉殿の13人』で、鎌倉幕府の初代執権・北条時政役をやらせていただいています。大河ドラマというのは、本当に大勢の方が見てらっしゃるんですね。ありがたいことに反響が大きいようで、デパートでウロウロしていると「パパですよね」とか「パパ上様」なんて話しかけられることも。

5月に安美錦関の断髪式にうかがいましたら、「パパ~ッ」と拍手をいただいてちょっとびっくりしましたし、若い人が「時政パパ、かわいい!」などとSNSに書き込んでいるのを見ますと、照れくさく思いつつ、時代劇なのにパパと呼ばれる面白さを感じます。ドラマでは父上としか呼ばれていないのに。不思議ですね。

バラエティ番組に呼んでいただく機会が増えたのも思いがけないことでした。といっても、いつも素のままなんですよ(笑)。最初は多少緊張しましたが、慣れていないときに一緒に出させていただいたサンドウィッチマンさんのおかげでずいぶん緊張がほぐれましたので、とても感謝しているんです。

50年近く歌舞伎俳優をやってきましたが、1年以上舞台を休むのは初めての経験でした。三谷幸喜さんには、「三谷かぶき」に出演したご縁で「いつか映像の仕事もしましょう」と言っていただいたのですが、こうしてお声がかかり、「あの言葉は本当だったんだ」と嬉しくて。

歌舞伎の勉強を積み重ねる一心でここまできましたが、そろそろほかの経験をするのもいい機会だと思い、お受けすることにしました。